鳴らない楽器 [Haiku] – J.L. ボルヘス

奏でずも
調べは知りぬ
胸の内

 アルゼンチンの詩人、ボルヘスの詩「十七句」の4つ目の句で、「4」が付番されています。

Callan las cuerdas.
La música sabía
lo que yo siento.

– Jorge Luis Borges

 まず、直訳としてはこのような感じでしょうか。

  弦は静かなままだ。
  音楽は、私が感じていることを知っていた。

もちろんこのままでもよいのですが、「私が感じていること」とは何だろう?と思いました。俳句風に詠むにあたって、(勝手な)イメージを膨らませてみたくなったのです。日本には「百人一首」という古い時代の詩集があります。これは句集ではなく和歌集ですが、まあ似たようなものでしょう。そして百人一首ではなんと多くの恋が詠われていることか!

 彼らにならい、この詠み人の「感じ」を、誰かに対する特別な想いのつもりで、次のように色をつけてみました。

  弦は静かなままだ。
  しかし、演奏されるはずの音楽は、私のあなたへの想いを知っている。

 楽器で演奏されなくとも旋律は伝わるように、秘めた気持ちも、口に出さずともどこか溢れ出てしまうようだ。

 いささか強引ですが、このように収めてみました。

その他の「十七句」:
原文 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

Original by Jorge Luis Borges (1982). La cifra. Alianza
Photo by Ylanite Koppens

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